すべてわたしたちのもの

出会った時からわたしを魅了し続ける音楽家、中村好伸さんの新しいアルバム『Our』が4/3に発売された。

好伸さんの音楽は歌詞がないインストであることも相まって、
いつでもどんなシチュエーションでも聴ける。
聴けばいつだってニュートラルな自分になれるから好きだ。

これまでのアルバムが充分ステキだから
新作が出なくてもなんの不満がなかったけれど
3年ぶりの新作とあらばぜひ聴いてみたい。

とはいえ、今のわたしは子どもがいて郊外で暮らしているからすぐにひ買いに行けない。
だからネット通販にて購入。翌日すぐに届いた。

届いたCDを開けたとき、ちょうど夫が、昼ご飯を食べに自宅へ戻ってきた。
さっそく家族みんなで聴いてみた。

よく晴れた日の昼下がり。
春になり、太陽のぽかぽか光が部屋の中までしっかり届く。
冬の間は昼も必要だった電灯はもうつけなくていい。

自然光であかるくあたたかい部屋の中で
『Our』を聴いていたら
なんだか踊りたくなってきた。
・・・いつのまにか踊っていた。

とても良い気分で家族とダンス。

音に身を任せ身体を動かし
この上ない幸せに浸りながらふと気づいた。

今回のアルバムが『Our』というタイトルだということに。

『望郷4』
『望郷ヘクトパスカル
『望郷デッサン』

これまでの好伸さんのアルバムタイトルに必ずついていた「望郷」という言葉がついていない。

これは、すごい変化だ。



かつての若者にとって、故郷を出て街で生活することが、大人への必要条件だった。
時に故郷を忘れることが必要だった。
だからこそ強く故郷に想いを馳せる時が必要だった。
そんな時に寄り添ってくれた音楽が好伸さんのこれまでの望郷シリーズだった。

しかし、私たちは、
大震災とそれに伴う原発事故をきっかけに
《故郷がなくなる》
《故郷が姿を大きく変える》
ということが誰にでも突然起こる可能性があるのだと突きつけられた。

もう、故郷とは敢えて思いを巡らすものではないのだ。

生まれ育った土地も
今生活している土地も

昔からお世話になっている家族や友人も
成人してからの友人や新しい家族も

すべての存在が有り難くみんな愛おしいかけがえのないもの。

世の中にわたしだけの物事などなく、
すべての問題や物事はわたしたちのものなんだろう。

日常を「特別」にする音楽ではない。
けれど、
ささやかな日常こそかけがえのない愛しいものだと気づかせてくれる音楽。

わたしたちの音楽。

中村好伸『Our』 ぜひ。

アルバム情報
http://mao-jp.com/2014/news/our-%e4%b8%ad%e6%9d%91%e5%a5%bd%e4%bc%b8/

アルバム『Our』からミュージックビデオ
https://m.youtube.com/watch?v=7AWHNc4orDM